原発は子孫への犯罪

原発は子孫への犯罪

 A NUCLEAR POWERPLANT IS A CRIME TO POSTERITY

 

 恐れていたことが、核廃絶を世界に訴えてきた被爆国で起きてしまいました。

半年が過ぎても収まらず、大量の放射性物質を放出し続けています。

原発は平和利用の美名の下に推進されましたが、核反応を用いる点では

核兵器と変わらず、命を脅かす放射性物質を生み出します。

フクシマは今、それを実証し、原発が平和利用ではないことを物語っています。

このような中で、核廃絶と云われても世界は耳を貸しません。 

原発を核兵器と同じ核利用として捉え、

目先の経済や電力に絡めて論じるのではなく、

もっと根本的な地球・命・安全・未来を見据えて、

そのリスクを検証し世界に発信すべきと考えます。

 

 検証にあたっては、地球と子孫の視点(時間軸)で考察する必要があります。

大気や水は地球上を移動しており、放射性物質は半永久に消えないからです。

 

 国際原子力機関によれば2010年現在29カ国が431基保有しており、

世界人口の約16%の5カ国で発電容量の約7割を占めています。

事故が起きれば原発を持たない国も被害を受けます。フクシマ後、

世界は安全や賠償などの国際的な枠組み作りをしようとしています。

日本の場合、当該県知事と町長らとの合意によって進められてきましたが、

このようなやり方は許されなくなるでしょう。深刻な被害は他県にも及び、

国家による賠償は全国民の税で賄われますから、国全体の合意が必要です。

更に、大気と公海を汚していますから他国のコンセンサスを得なければならないでしょう。

 

 子孫のリスクは計り知れません。私達WARDは、子孫に代わって被害を想定し、

廃絶を訴えてきましたが、その想定が現実のものになりつつあります。

日本には、使用済核燃料棒が累計28000トン(2010)、

原発から出た低レベル放射性廃棄物は2008年3月末現在で

200Lドラム缶換算で約60万本(2010エネルギー白書)あり、

最終処分場も決めていません。

この上にフクシマの放射性汚染物や除染や廃炉から発生する核廃棄物が加わります。

今、周辺8都県では高濃度の放射性物質を検出した下水汚泥や

ごみの焼却灰の行き場がなく困惑しています。

そして、費用も巨額です。核廃棄物の処理、除染、賠償、廃炉などの費用は

今の世代だけで清算できる額ではなく、これらの負担は結果的に

後の世代へ皺寄せられていくことは明らかです。

 

 それ以上に心配なのは健康です。チェルノブイリでは事故後5~10年に甲状腺癌、

小児白血病、小頭症などが増えました。マウスを用いた実験では傷ついた遺伝子が

子孫に受け継がれていくことが確認されています。

食事などで体内に取り込んだ放射性物質は蓄積されますから、

余命の長い子供ほど内部被曝の影響を受けます。

ヒロシマが66年後も終わらないように、

被害は晩発しますから、被曝した子供達は生涯不安に怯え、

健康で平安に生きることが難しくなります。

 

 また、人々を潤した豊かな大地が一転して人々を襲う恐ろしい地と化し、

生活圏は狭められます。

 

 未来に生きる人達は、原発から得られるものは何もなく、

半永久に消えない核廃棄物の悪影響を受けながら、先人達の後始末に、

多額の費用と時間をかけ続けなければなりません。原発は極めて危険で、

子孫に悪影響を及ぼすものと知りながら、その解決方法もないのに、

今日の快楽のために後の事を考えず稼動することは正しく「犯罪」です。

子孫にとって原発は、悪質な消えることのない負の遺産です。

 

 原発の電力コストは、事故防止強化、核廃棄物最終処理、廃炉費用、事故保険などを

正しく見積もれば、算出できないほど高くなり、電力として採算が合いません。

更に暴走を止める技術も廃棄物の最終処分地も方法も確立しておらず、

未来永劫に人々を苦しめますから、使ってはいけないエネルギーです。

即ち、原発を除外して電力を論じるべきです。

 

 チェルノブイリ後、先進国は撤退の方向にあり、フクシマを受けて、

イタリヤは国民投票で無期凍結を決め、ドイツは2022年までに全廃を決めるなど、

自然エネルギーへ転換しようとしています。

しかし、新興国などは増やそうとしています。

核は拡散し、軍事転用、テロ、事故などの発生確率は高くなり、

共通の住処が危うくなります。日本は核兵器廃絶を訴えるだけでなく、

原発の正体とフクシマの真実を曲げることなく世界に伝え、

核の脅威から地球と人類を守る使命があるのではないでしょうか。

 

 原発がある以上、事故は必ず起きます。核廃棄物も増えます。

人々を苦しめ、地球の生命圏を壊し、未来を奪います。

子孫を思えば1日も早く1基でも多く止める責務を感じます。

持続可能にするには、地球の営みに合わせて生きるしかないと知り、

自然エネルギーへ向う時と考えます。

 

渡辺英男 HIDEO WATANABE 

© World Association of Representatives for Descendants:WARD:世界子孫代理人会